ペナント奪還の鍵を握るエース菅野智之

ペナント奪還の鍵を握るエース菅野智之

色々物足りない点もあるし、まだまだこう呼ぶには相応しくないかもしれいないが、個人的には読売ジャイアンツのエースは菅野智之だと思っている。
勿論、去年の内容を見るとマイコラスの投球内容は彼のそれを上回っていたかもしれないが、やはりマイコラスはあくまでも「助っ人」であり、日本で好成績を残したオフには必ずMLB復帰の問題がついてまわる。
つまり今後数年間、読売ジャイアンツが安定して優勝争いするチームになるには、菅野がローテーションの絶対的な中心軸として他の投手を引っ張り、ポイントとなる試合で登板し、結果を残さなければ厳しい。
しかし、残念ながら去年の彼の投球内容は、エースとしては物足りないモノだった。

彼の年度別成績をあらためて振り返る。



























W
H
I
P
2013 巨人 27 26 1 0 0 13 6 0 0 .684 729 176.0 166 10 37 0 5 155 2 0 70 61 3.12 1.15
2014 23 23 3 0 1 12 5 0 0 .706 640 158.2 138 12 36 3 2 122 6 0 50 41 2.33 1.10
2015 25 25 6 2 0 10 11 0 0 .476 710 179.0 148 10 41 4 7 126 3 0 46 38 1.91 1.06
通算:3年 75 49 10 2 1 35 22 0 0 .614 2079 513.2 452 32 114 7 14 403 11 0 166 140 2.45 1.07

数字上では前2年と比べていくと、勝敗以外は特に悪くなっている項目はない。
むしろ防御率などは数字が良くなっている。
では何故、前2年と比べて我々Gファンの印象が良くないのか?
又は、何が変わってきたのか?
ここを考えていくと今シーズンに向けた菅野智之の課題が見えてくると思う。

では具体的に、筆者が去年の投球を見て感じた「変化」とは何だったのか?
個人的には「投球スタイルを変えた事」だと見ている。

★奪三振が多い反面、多くの球数を必要としている投球スタイル
去年のシーズン前のインタビューで、彼は一昨年終盤に肘の故障で戦線離脱した事を受けて、なるべく球数を抑えて長いイニング投げるスタイルを模索している趣旨の発言をしていた。
これはエースとして、200イニング登板を目標にシーズン怪我せずにチームに貢献する意思を示した発言だと思う。

思い返せば、ルーキーイヤーの菅野は初球から三振を狙う攻め方(配球)で打者を抑えていた。
学生時代は150キロオーバーの直球をガンガン投げ込み、空振りやファールを打たせてカウントを稼ぐスタイルだった。

そして浪人を経てプロに入ってからは、スピードを落として制球重視で打者を攻めてはいたが、際どいコースを狙ってカウントを稼ぐスタイルに変化しただけで、基本的にはアマ時代と同じで「三振」を狙う配球になっていた。
その三振を奪うためのウイニングショットは、彼の場合はスライダーとフォークである。

145キロオーバーの直球と大きく曲がるカーブ、切れ味鋭いスライダー、落差の大きいフォークが常に決まれば、打者を三振に討ち取る為に必要な球数は4球程度で済むが、彼の場合はリリースポイントでの肘の高さと手首の角度が一定しないケースが多く、特にフォークの精度が日によって大きく変わってくるので、これが決まらない場合は、早く追い込んでも結局は球数を要してしまう
やはり、完投するには少なくとも130球程度の球数が必要だった。
それが2年目には相手も彼の投球に慣れてきたので、簡単に三振を奪えずに更に球数を要する結果となった。
そして、それが肘の故障に繋がり、彼は自身の投球スタイルを変える必要性を感じた訳である。

★肘の故障で球数を減らして打者を討ち取る術を模索する
前段の理由で、彼は肘に負担を掛けずにゲーム終盤まで(可能なら完投を目指す)投げる為の、少ない球数で打者を討ち取る術を模索する。

その解決策として、彼は早い段階でツーシーム系(ワンシーム)の手元で動くボールを多投し、バットの芯を外して討ち取る事を考えた。
そして、このスタイルをモノにすべくキャンプから取り組んでいたが、オープン戦からシーズン序盤は中々思惑通りには進まなかった。

勿論、故障明けの肘が万全ではなかった事も大きいが、肝心の直球系(フォーシーム・ツーシーム・ワンシーム)のスピードと切れが物足りなかったので、そのボールを痛打されてしまっていた。
特に、球数を少なくしたい立ち上がりは、手元で動く直球を狙われて失点してしまうケースが目立っていた。

★甦ってきた直球。。しかし。。。
シーズン序盤は苦しんでいた菅野だったが、シーズン中盤には彼が並みの投手ではないのが証明される。
動く直球の多投で錆び付いてしまっていたフォーシームのスピードと切れを、徐々に改善する事に成功し、次第に投球内容が良くなってきた。
しかし、それは去年までの投球スタイルに戻したに過ぎず、既に彼のボールに慣れている相手打者を去年までのように簡単には討ち取れなくなっている事に変わりはない。
やはり、元のスタイルに戻れば自然と球数は増えてしまう。
そして蓄積された疲労はシーズン終盤の投球に表れてしまった。

★期待通りの援護が出来ないG打線
味方打線の援護が例年以上に期待できない環境下では、相手に先取点を奪われた時点で敗戦を覚悟しなければならない。
今年の菅野は序盤でアッサリ失点してしまうケースが目立ち、中盤以降は立ち直って無失点で凌いでいたが、そのまま打線の援護なく敗戦してしまっていた。

ここでポイントになるのは、確かに菅野自身の防御率は去年と比べて飛躍的に上がっているが、全体的にセリーグの防御率は大きく向上しているので、防御率の向上=勝ち星の増加には繋がらない訳である。

★リリーフ陣の不安定さが、更に菅野を苦しめる
それでも菅野は高い防御率が示すように、試合を壊すことなく、ゲーム後半まで試合を作っていたが、時にはリードして途中降板したケースで、勝ちパターンの山口・マシソンが同点・逆転を許してしまうケースもあった。
彼自身の勝ち星が伸び悩んでいる時に、こういうケースが生まれてくると精神的にキツくなる。
つまり、少しでも長いイニングを投げて「出来ることなら完投する事」を序盤から考慮して投げねばならなくなる。
よって、シーズン前に模索していた「少ない球数で打者を討ち取る」事を再び実行せねばならない事になる。
だが、既に菅野にはそんな余裕はない。
シーズン終盤に入ると優勝争いも佳境になり、しかも打線の援護が期待できない中では、立ち上がりから飛ばしていかねばならない。
一方で「少しでも長いイニング投げねば」という思いもある。

優勝争いの佳境の中で、勝負処で彼らしくない甘いボールが多かったのは、技術・肉体・メンタルのバランスを微妙に崩していたように筆者には見えた。
結局、最後まで彼らしい勝負強さを発揮出来ぬまま、シーズンが終えてしまった。


★今シーズンの課題と期待

以前から弊ブログで何度も指摘したように、彼の場合はフォークとスライダーの精度を同時に上げるには、リリースポイントでの「肘の位置と手首の角度」の僅かなズレも許されない。
だが、やや肘が下がり気味に投げる彼の投球スタイルでは、非常に難しい難問と言える。
個人的には両方をマスターする事よりも、スライダーの精度を更に高めて、フォークを捨てる覚悟も一考だと思っている(肘痛防止の意味でも)
しかし、絶対に縦の変化球も必要なので、フォークをスプリット気味の握りにして変化を小さくしたり、新たにチェンジアップを習得する事も視野に入れた方が良いと思う。
今の肘の高さでは、フォークよりもチェンジアップの方が合っているとは思うが、いずれにしても彼もマイナーチェンジは必要だと感じている。

今のままでも数字が示すようにソコソコの結果は残すだろう。
しかし去年、結局1勝も出来なかった苦手スワローズの強力打線を抑え、誰もが認めるエースになるには「勝負処で中途半端なスライダーや、明らかなボールになる事が多いフォークに頼るのではなく」更に磨いた強力なウイニングショットが必要になる。
その為には基本となる直球系の錆(悪くなった制球と切れ)を落とす事も最重要課題として取り組んで欲しい。

以上 敬称略

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