「侍を蘇らせた近藤健介のバッティングアプローチ」侍ジャパン観戦記 2021.7.26
【大会概要の考察】
参加6ヶ国を予選グループをAとBの二つ(各グループ3チーム)に分けてリーグ戦を行い、各組1位はノックアウトステージの1回戦を免除される。
そのノックアウトステージは、非常に分かりにくいシステムなので、下記のトーナメント表を参考しててほしい。
まあ、平たく言えば、予選リーグは仮に最下位になってもそこで敗戦が決するのではなく、あくまでもノックアウトステージのシード権を争う戦いと考えた方が良い。
つまり、各グループリーグ最下位のチームは、ノックアウトステージで1敗した時点でメダル獲得の可能性は消滅し、グループステージ2位のチームはノックアウトステージで2敗した時点でメダルの獲得の可能性が消滅し、グループステージ1位のチームは2敗した時点で金メダルの獲得が消滅して3位決定戦にまわる。
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※上記のトーナメント表はWikipediaから抜粋
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ここで抑えておきたいポイントは、予選を同じ組で戦ったチーム同士では最大3試合戦う可能性があること。
つまり、金メダルを狙うには、目の前の相手に対して「勝ったら終わり」ではなく、次の対戦の可能性を常に頭に入れながら戦う必要があること。
【参加国考察】
A組、日本、メキシコ、ドミニカ
B組、韓国、アメリカ、イスラエル
この参加国で前述のノックアウト方式のトーナメント戦なら、日本が金メダルを獲得する確率は7割あると見ている。
勿論、過去の歴史を見ると怖いのはアメリカと韓国で、ドミニカも対戦投手次第(つまりメルセデスと当たるかどうか)で苦戦する可能性があるし、メキシコとイスラエルは前述の3カ国と比べると力は一枚落落ちると思う。
まあ、個人的にはメンバー的にアメリカが一番手強いと見ている。
勿論、これまでと同じで「本気」のメンバーにはほど遠い「3Aレベル」のチームだが、何だかんだ言ってもそこは野球大国のアメリカな訳で「金メダルを狙えるチーム編成」はしてきたと思う。
メジャーにお呼びがかからない選手でも、NPBで通用してきた選手はこれまで数えきれないほどいた訳で、特に投手に関しては日本の打者が初見で簡単に攻略出来ないと考えた方が良い。
次に怖いのは韓国だが、こちらは毎回国際大会で顔なじみのメンバーが中心で、それ以外の選手もある程度の「情報」は持っていると思う。
こちらの場合は対日本への「強烈な対抗意識」が怖いが、そこもこれまでに数多くの国際大会を重ねた事で、日本チームにも韓国チームにも「慣れ」が生まれてきているので、北京オリンピック当時とはかなり違っていると見ている(しかも今回は日本のホーム)
まあ、前々回のプレミア12のような「慢心」が生まれなければ問題ないだろう。
【予選ラウンド第1戦、対ドミニカ共和戦イニング雑感】
☆1回表、ドミニカ攻撃
ロドリゲスのヒットとバティスタの死球で一死一二塁のチャンスを迎えるが、フランシスコを併殺打に討ち取って無得点。
立ち上がりの山本は、全体的にボールが制御されておらず、ストレートは抜け球が多く、変化球もキレを感じなかった。
それでも何とか無失点で凌げたのは、やはりフランシスコが打ち気に逸ってボール球に手を出してくれた事が大きかった。
★1回裏、日本攻撃
二死から吉田がヒットで出塁するが、鈴木が倒れて無得点。
相手のメルセデスは立ち上がりの山本のような「緊張感漂う投球」ではなく、ペナントレースとほぼ同じリズムでテンポ良く投球をしていた。
☆2回表、ドミニカ攻撃
立ち上がりのピンチを凌いで落ち着きを取り戻した山本は、この回をほぼノーミスの投球で三者凡退に抑える。
★2回裏、日本攻撃
左打者の柳田と村上の四球で二死一二塁のチャンスを迎えるが、下位が倒れて無得点。
メルセデスは立ち上がりと変わらない素晴らしい投球だったが、かなり審判の判定に泣かされて二つの四球を与えてしまうものの、甲斐をしっかりと討ち取っていた。
逆に日本側からすれば、メルセデスの内角に切れ込むストレートに右打者が差し込まてしまっている。
☆3回表、ドミニカ攻撃
「ピンチの後にはチャンスあり」
この格言通りに今度はドミニカにチャンスが生まれる。
先頭のバレリオのヒットとボニファシオの四球で一死一二塁のチャンスを迎えるが、主軸のロドリゲスとバティスタが倒れて無得点。
この回の山本は再び高めにボールが集まる苦しい投球だったが、相手の打ち損じに助けられた印象が強い。
★3回裏、日本攻撃
二死から吉田が四球で出塁するが、鈴木が倒れて無得点。
相変わらず日本の右打者はメルセデスのストレートに差し込まている。
☆4回表、ドミニカ攻撃
徐々に調子を上げてきた山本は、ストレートとフォークを軸に、上手くカーブで緩急を使いながらドミニカ打線を三者凡退で抑える。
この辺りからようやく「抜け球」が無くなってきた。
★4回裏、日本攻撃
ここまで1ヒットに抑えられている侍打線だが、この回もあえなく三者凡退。
メルセデスのストレートと変化球のコンビネーションが冴えわたっていた。
☆5回表、ドミニカ攻撃
前の回からようやく低めにボールが集まりだした山本の投球の前にドミニカ打線は沈黙する。
★5回裏、日本攻撃
メルセデスはこの回も危なげなく三者凡退で抑える。
甲斐はセーフティーバントを試みて、何とかメルセデスの投球リズムを崩そうするが失敗に終わる。
試合の流れは均衡を保ったままの状態で試合後半に入る。
☆6回表、ドミニカ攻撃
完全に自分の投球を取り戻した山本は、この回のドミニカ打線を三者連続三振で抑える(前の回と合わせて四者連続)
★6回裏、日本攻撃
何とか先制点を奪いたい侍ジャパンだったが、2番からの攻撃もあえなく三者凡退で抑えられる。
☆7回表、ドミニカ攻撃(2点先制)
ここで日本側は何と好投を続ける山本から二番手の青柳にスイッチする。
その青柳はフランシスコとメヒアのヒットで二死一二塁の招いてしまい、バレリオに2点タイムリー二塁打を打たれてしまう。
しかし、その後の二死一二塁のピンチは三番手の平良が何とか凌いだ。
青柳にスイッチした采配については賛否両輪あると思うが、それについては後段で触れようと思う。
★7回裏、日本攻撃(1点返す、日本1-ドミニカ2)
ドミニカベンチは日本とは対照的に、この回もメルセデスをマウンドに登らせた。
しかし、巨人ファンなら見慣れた光景のメルセデスの「100球肩」は国際大会でも変わらず、浅村と柳田の長短打で無死二三塁のピンチを招いてしまう。
ここでドミニカは継投を決断し、右のカスティーヨを投入する。
侍ジャパンは何とかこの回最低限「同点」にはしておきたかったが、結局村上のファーストゴロの間の得点のみで攻撃が終わってしまう(無死二三塁での菊池の三振が痛かった)
☆8回表、ドミニカ攻撃
同点にされる大ピンチを1点だけで凌いだドミニカサイドは大いに士気が上がるが、四番手の山﨑が何とか無失点で切り抜ける。
★8回裏、日本攻撃
ここでドミニカベンチは三番手で同じく右のディアスを投入するが、先頭の山田が粘って四球で出塁し、坂本の犠打で一死二塁のチャンスを作る。
ここで吉田が見事な狙い撃ちでレフト前に打球を運ぶが、レフトからの好返球で二塁走者の山田が本塁で憤死する。
結局この後の鈴木も倒れて日本は同点のチャンスを最悪の形で逃してしまう。
尚、この回の坂本の送りバントの是非と、山田の本塁憤死についても後段で触れたいと思う。
☆9回表、ドミニカ攻撃(ドミニカ1点追加、日本1-ドミニカ3)
これ以上の失点は避けたい日本は抑え候補の栗林を投入するが、前の攻撃で「非常に嫌な流れ」を作ってしまったことが、ルーキー守護神に極度のプレッシャーを与えてしまう。
いきなりメヒアに二塁打を打たれ、グーズマンには制球が定まらずに四球を与えてしまい、無死一二塁のピンチを背負ってしまう。
その後、一死一三塁と局面が変わり、9番のヌネスにタイムリー二塁打を与えてしまい、非常に痛い追加点を許してしまう。
しかし、ここから栗林は流石だった。
本来なら気落ちしてズルズルと決定的な更なる追加点を許してしまう流れになっていたが、後続の打者を連続三振に討ち取る。
結果的にここで食い止めた事がサヨナラ勝ちに繋がった。
★9回裏、日本攻撃(日本が3点を奪ってサヨナラ勝利)
ドミニカベンチは四番手としてアセンシオを投入。
先頭の浅村は倒れるが、このアセンシオはこれまでに登場した投手の中で間違いなく最も組みやすい投手に見えた。
つまり、二死からの出塁では流石にキツイが、一死からチャンスメイク出来ればまだまだゲームの行方が分からないという読みを個人的にはしていた。
そして柳田がそのアセンシオのミス(ベースカバーに入らず)で出塁し、続く近藤がクリーンヒットで繋ぎ、村上がライト前にタイムリーヒットを放つ。
そして、ここでもドミニカ守備陣にミス(ライトが打球をファンブルする感に一塁走者が三進)が生まれ、一死一三塁のチャンスを迎える。
この場面で日本ベンチは甲斐にセーフティースクイズを命じ、それを見事に決めて(しかも打者走者も一塁セーフ)同点でなおも一死一二塁。
更に山田もヒットで繋ぎ、一死満塁で勝負強く経験豊富な坂本を迎えるという最高の形になる。
そして、その坂本が見事に期待に応え、初球のストレートを捉えてサヨナラ勝利。
改めてこの回を振り返ると、この一連の攻撃の中で最も大きかったのは近藤のヒットだった。
それまでの誰よりもバッティングアプローチが秀逸で100点満点だった(狙い球を絞りつつボールを見極め、打つべきボールを手元まで引き付けて最短距離で一発で仕留める)
それまで日本の各打者が全く実践出来なかったバッティングが、途中代打で登場した近藤がいとも簡単にやってのけた姿を見て「ハッと目を覚ました」と思う。
これ以降の各打者は打席の中で明らかに落ち着きを取り戻し、自分からボールを迎えに行くバッティングではなく、失投をじっと待って一発で仕留めるスイングに変貌していた。
それと、この回はドミニカ側が早めにアセンシオを諦めて、他の投手に交代させることを最も恐れていたが、どうやら彼以上の投手はドミニカには居なかったようだ。
そう考えると、メルセデスを交代させて始まった継投は、勝つためには本来ならどんどん良い投手が出てこないと苦しくなるわけだが、ドミニカは逆だったので、この敗戦は必然だったのかもしれない。
【気になった選手】
★山本由伸
序盤は国際試合特有の緊張感でボールが全体的に上ずっていたが、徐々に落ち着いたマウンド捌きに変わっていき、4回からの3イニングは相手を手玉にとっていた。
しかしながら、本音を言えば「オリックスの山本」はもっと凄いボールを投げていたので、もしかしたらまだまだ国際球(日本のSSK製)が手に馴染んでいないかもしれない。
ちなみに2015年のプレミア12はNPB統一球(ミズノ製)で、2019年プレミア12(山本も出場して大活躍)はSSK製らしいがが。。。。
★青柳晃洋
ペナントレースの投球と比べて、そこまで悪い状態のようには思えなかったが、ドミニカ打線に捕まってしまった。
気になるのはドミニカの各打者が全く打ちづらそうにしていなかったこと。
まあ、打たれたのが左打者で、元々対左打者には分が悪い投手ではあるが、腕が振れていなかった(ボールに威力を感じなかった)ようにも思えた。
★山﨑康晃
今年のペナントレースの状態と同じで、ストレート系が全体的に抜け気味で、右打者の外角を狙ったボールが甘くなるケースが多かった。
又、最大の武器であるツーシームもキレがイマイチで、相手打者に見極められていた。
正直言って今回は相手の打ち損じに助けられた感が強く、良かった時の「ヤスアキ」にはほど遠いデキだった。
個人的には、競った展開では怖くて使えない。。。。
★鈴木誠也
バッティングの際、去年から色濃くなった「右肩が早く出て来てしまう癖」がこの試合でも明確に出てしまっていた。
ある程度ヤマを張っているボールが来た際は、これでも何とか対応出来るが、狙い球や狙ったコースが違うと、ボールを捉える事はかなり難しい。
まあ、このクラスの打者は、ホントにキッカケ一つでバッティングの状態が良くなることもあるので、そこに期待はしているが。。。。
★村上宗隆
第3打席までは「気負っている心理状態」がバッティングに出てしまっていたが、第4打席は非常に落ち着いてボールをセレクト出来ていた。
まあ、この打席に関しては相手投手のレベルがかなり落ちるので、参考外(打って当然レベル)とも言えなくもないが、それでも第2戦以降はこれで本来のフラットな心理状態で打席に立てるだろう。
★菊池涼介
守備は流石の安定感だったが、バッティングに関しては全く打てそうな雰囲気が無かった。
元々、良い時と悪い時がハッキリと結果に出てしまうタイプだが、今日の内容は第一打席を見ただけで、個人的には全く期待感は持てなかった。
まあ、基本的に「ヤマ張り」の打者なので、それが裏目に出ると無様な凡退が多くなる打者ではあるが。。。
技術的にはテイクバックが浅く、ボールを迎えに行ってしまっている状態。
しかし、彼の場合は前述の鈴木以上に何かのキッカケでバッティングがガラっと変わるタイプなので、それが早めにやってくることを願うしかない。。。。
★山田哲人、坂本勇人、吉田正尚、柳田悠岐、浅村栄斗
彼らは特に良い状態という印象もなく、悪い印象も感じなかった。
吉田と柳田は確かに二安打放っているが、まだまだバッティングの手探り感は否めない。
【総評】
➀7回表の青柳への継投の是非
個人的には山本をスパッと交代させたことには賛成だが、果たして青柳投入が妥当だったのかについては否定的である。
プロ入り以降、青柳は終盤のショートリリーフの経験は皆無で、対右には絶対的な優位性のある投手だが、対左には「普通の投手」であることは数字を見れば明らか。
それでも第二先発のような起用方法なら良いが、先発投手としてキャリアを積んできた投手に対して全く畑違いの起用法(しかもオリンピック)は否定的な意見を持たざるを得ない。
一方で、今後に向けてのデータ取りなら賛成する余地は残されているが、それなら2点先制されて更なるピンチを招いた場面で侍ジャパンのリリーフ陣の肝である平良を投入した采配との整合性はとれない。
まあ、今後のデータ取りの意味合いも並行して考えていたのなら、岩崎を投入してスイッチ打者の右打席を見ておく事も一考だったと思う。
➁8回裏の坂本の犠打と山田の本塁憤死について
坂本の犠打については「非常に消極的な采配」ではあるが「まあ仕方がないかな」という考え方。
それでもこの試合自体は負けたら終わりの「一発勝負」ではないので、相手投手のクイックモーションを見れば「山田が走れる状態」なら100%セーフだった筈で、停滞気味のチームに勢いをつける意味でも動かしても良かったかなぁ。。。と
しかし、今年の山田はそもそも盗塁数が去年から激減しているので、何か走れない事情があるのかもしれない。
でも仮に山田が走れない状態なら、この直後の吉田のタイムリーで本塁に突っ込ませた三塁コーチの清水の判断がどうだったのか?
どうしてもチグハグ感は否めない。
➂兎にも角にも初戦勝利は大きい
ツッコミどころ満載で、結果オーライ感は否めない初戦だったが、国際試合は試合内容が良くてもい勝ちに繋げられなければ何も意味がない。
そういう意味ではサヨナラ勝ちという勢いに乗るには最高の形での勝利は今後に向けて大きい。
是非とも首脳陣には失敗を恐れずに常に攻撃的な姿勢(迷ったら常に前に進む姿勢)で残りのゲームに臨んでもらいたい。
以上 敬称略
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