前回の投稿ではジャイアンツ(以下G)とカープの打線と比較して、G打線の右打者偏重と、加齢と故障による主力選手の走力低下による得点力不足を指摘した。
そして今回は更に突っ込んで2017シーズンの問題点を浮き彫りにし、今シーズンのメンバー構成から考えられる2018のG打線を考えていきたい。
★4番・阿部慎之助の苦悩
さて前回の最後で、走力不足をカバーする長打力が無い事を指摘したが、カープのように3番丸、4番鈴木のように、クリーンアップも打力も走力も秀でた選手を育成するのは短期的にも長期的にも容易な事ではない。
よって、現実的に考えれば3番坂本勇人はその資格を有しているが、4番打者に長打力と脚力の両方を求めるの無理がある。
去年の例で言うと、Gの4番は主に阿部慎之助が務めていたが、開幕当初の活躍は十分に4番打者と言える内容だったが、元々全身に古傷を抱えているので、その状態は長く続かなかった。
それでも技術的には今でも球界屈指である彼なので、得点圏で勝負強い打撃を見せて、打点はそれなりに稼いでくれたが、脚力のない彼は内野の頭を越えないとヒットにはならないし、完全に外野の間を抜かなければ二塁打にはならない。
彼の場合は、イニングの先頭でヒットを打って出塁しても、次の打者が外野の間を抜く二塁打級のヒットを打たなければ三塁には進めないし、外野手が致命的な判断ミスや送球ミスでもしない限り、二塁打でも一塁から一気に生還できない。
又、仮に次の打者がヒットや四球で出塁しても、極端に足が遅い阿部が二塁に居るため、一塁走者が前方を走る阿部を気にしながら走らねばならず、スタートも遅れる要因にになるし、次の塁を積極的に奪いにいく姿勢に繋がらない。
よって彼の後に続く5番・6番を、中距離ヒッターや長打を望めない打者を置くと、得点能力は間違いなく頭打ちになる。
但し、阿部は「野球頭脳が高く視野の広い選手」なので恐らくこの点は十分理解していたと思う。
「チームのメンバー構成を考えると、自分が4番を打つしかない」
去年の映像を見返すと、彼もこう考えて、去年のシーズン中はHR狙いのフルスイングが多く、四球で自分が塁に出ても得点力が上がらないのなら、多少ボール球でも狙った球種・コースに近いのなら強引にフルスイングしていたように思えてならない。
負のスパイラルとなって、トータルの打率が低迷した大きな要因だと見ている。
★新加入の4番候補・ゲレーロへの期待と不安
去シーズン後半で阿部の後の5番を任せられていた村田を戦力外とし、新たに昨シーズンの本塁打王ゲレーロを中日から獲得した。
では、まず去年と同様の成績を今季も残すことを前提にして話を進めていく。
結論から先に言えば、間違いなく去年より得点力は上がる。
理由①
今年も坂本が3番を打つことはほぼ間違いなく、ゲレーロの前で出塁するケースが多くなるので、ここ数年殆ど見られなかったホームランによる複数得点の形がボチボチ出てくるし、更に1・2番の出塁率次第では更に多くなる。
理由②
マギーが去年同様に怪我無く無事にシーズンを終えれば、それなりの数字を残すこと可能性が大きいので、二塁打が多い彼の前を打つゲレーロとは勝負せざるを得ないケースが増える。
その場合、ゲレーロは決して走力があるタイプではないが、去年のプレーを見る限り阿部よりも格段に脚力はある。
よってツーアウトで彼が一塁に居るケースでマギーがツーベースを放った場合、一塁から一気に生還出来る可能性は格段に高い。
一方で、一部ファンの間では「去年のゲレーロのHRが単発(ソロ)が多かったので、打点を多くは望めない」という意見もあるが、去年のドラゴンズは彼の前後を打つべき選手である大島・平田・ビシエドなどが故障で欠いていたので、彼にマークが集中するのは至極当然と言える。
理由③
上記のように機能すれば、阿部を6番に置く打線が完成し、まだまだ技術的にレベルが高く、相手投手には威圧感のある彼が下位に居れば、クリーンアップが溜めた走者を生還させる役割が期待できる。
更に理想を求めるなら、長野がシーズン後半のような数字を残してくれれば、彼を6番に置き、阿部が7番に座る事による相乗効果は倍増し、場合によっては相手バッテリーが大量失点を恐れて、打力が落ちる8番小林と9番ピッチャーとの勝負を視野に「逃げ」の姿勢で来る可能性も高くなる。
そして仮にその攻撃が最少失点や無得点に終わっても、次のイニングは上位から再び攻撃するわけで、相手投手が受けるプレッシャーは近年とは比較にならないだろう。
そして4番阿部以外の打順なら、首脳陣も彼の体調を見て起用していく事も十分に可能であり、その方策を取り易くなるのは間違いない。
カープの新井のように適度に阿部自身の成績も向上する可能性はまだまだ秘めているし、弱点の一つだった代打の切り札としての役割も担える。
さて、ここまで語ったのは「あくまでゲレーロが期待通りの活躍をしたケース」であって、様々な点を考慮すると、彼自身のプレーやメンタル面で不安な面も多々ある事は否めない。
又、筆者が課題にあげていた左打者不足解消の妙薬にはなっていないし、台頭を期待してる岡本和真や他の若手選手のポジションが減ってしまうので、その点を含めて彼の加入を両手を上げて喜ぶ心境にはなっていない。
そしてもう一つ別のポイントとして、マギーを5番に置いた場合、ここ数年の懸念材料だった1・2番の出塁率の問題も再浮上してくる。
では少し長くなったので今回はここまでにし、次回はその点について考えていきたいと思う。
以上 敬称略