前回の更新を含め。直近三回にわたってG打線の問題点を考えて来た。
第一回は、優勝したカープ打線とG打線を比較した上で浮かび上がってきた問題点。
第二回は、オフの目玉補強ゲレーロが期待通りの結果を残した場合の相乗効果について。
第三回は、そのゲレーロが果たして活躍してくれるのか?
そして今回は、ゲレーロ以外の打撃陣に着目しつつ、G若手野手が伸び悩む原因や、避けては通れないドラフト編成の失策にも目を向けていく。
そして、出来れば期待している若手野手についても個人名をあげて書いていきたい。
★ポジションは1つしか空いていない
今日からプロ野球も一斉にキャンプインしたが、我がGの指揮官である高橋由伸監督は今キャンプの前、記者団に対して「ショート以外のポジションは決まっていない」という主旨の談話があったらしい。
つまり、坂本以外は白紙に近い状態でポジションを決めていくという事である。
それだけ若手の台頭を切望し、更に言えば彼らに向けられたメッセージという訳である。
但し、水を差すわけではないが、ぶっちゃけて言えば空いているポジションは殆どない。
それくらい去年までのレギュラーはネームバリューが大きく、積み上げてきた各選手のブランドは強力である。
例えばマギー・陽・阿部・長野・ゲレーロは、過去のタイトルホルダーであったり、それぞれの所属していたチームで優勝に大きく貢献してきた強者揃いである。
又、彼らとは同列には扱えないが、小林も賛否両論あるが直近のWBC正捕手である。
ここまであげた6人に関しては、怪我をしない限りシーズン前半はレギュラーであるのは間違いないだろう。
そうなれば坂本を含めてこれで7人のレギュラーが固定されており、残す枠は1人だけになる。
これではファンが渇望している若手の台頭の門は非常に狭く厳しい。
★チームを低迷させている「過剰なスター選手のブランド」
Gの選手は過去に大きな実績を引き下げて入団したFA選手や外国人、そして生え抜きとしてコツコツ積み上げてきたベテランのスター選手が多い。
勿論、積み上げてきた名声によって作られた選手としてのブランドは称えられるべきである。
だが個人的には、「過剰と言える選手のブランド数」が、今のG打線の弱点であり、世代交代の足かせと考えている。
選手個人のブランドは、数が多くなればチームが強くなるとは一概には言えず(例えば大砲コレクションをしていた長嶋・堀内監督の一時期)常に若くて躍動感のある選手を混ぜて鮮度を保つ事で、チーム全体の力に変えて機能させていかなければならない。
それが去年のカープ打線という事であり、近年のGで例えるなら2000年の優勝や2007~2009年の三連覇は、確かにカープのように全ての主軸選手を自前で育成した訳ではないので一律には語れないが、他球団から補強した選手と台頭してきた若い選手を巧く融合させてきたからである。
しかし、今のG打線は加齢と共に鮮度が年々劣化し、それを補うべく獲得したFA選手も低迷し、若くて勢いのある選手も頭打ち状態で打線に躍動感が皆無である。
つまり、過去の実績で積み上げてきたブランドを持った選手だけでは、集合体(チーム)の中では機能しないという事である。
加えて今の主力選手(ブランドを持った選手達)は故障する危険性が高いという大きなリスクを抱えている。
具体的に言うと、阿部・マギー・陽・長野に共通しているのが「過去に選手生命を脅かした古傷持ち」という事実。
長野に関しては、一昨年オフに手術をした膝がかなり良くなって、充実した自主トレが出来たという情報があるが、彼もこの故障で一気にパフォーマンスが落ちてしまっている点は同じだ。
そしてゲレーロに関しては前回ブログで指摘したように、高確率で故障離脱するリスクが大きいバッティングスタイルであるという事。
チームとして大きな実績(価値が高いブランド)を持った選手が、ここから更に上昇していけば良いが、残念ながら今の高ブランドの選手は成績が下降線を辿っていく可能性の方が高い。
まあ、長い間好成績をあげてきたチームには、ある意味宿命ではあるが、ここから早めに手を打っていかないと、ファンには辛い暗黒期に入っていく事は、長いプロ野球の歴史を見ればわかるだろう。
だが、前段で述べたように、現在のGのようなチーム(高齢化したスター選手が多いチーム)を劇的に変える、つまり坂本を除いた大部分の選手を若手に入れ換えてチームを大改革するという方法は、ハッキリ言って机上の空論である。
何故かと問われれば、今の若い選手でレギュラークラスになる資質も持った選手が少ないからである。
彼らもプロとして入ってきた選手達なので、単年なら使えばそれなりに結果を出すかもしれないが、複数年レギュラーとして定着する選手が多く出て来なければ、それこそチームは袋小路にはまって、もっと長い低迷期に入り、ファンも離れていくだろう。
結局、金にモノを言わせて他球団から強奪していくしか術は無くなってくる。
だが、それもG以上に資金力を持ったホークスや、メジャーに進出するケースが出てきた近年は以前のようには出来ない。
だからこそ、ドラフト戦略が非常に重要になる訳だが、球団上層部は10年前の成功(三連覇)をモデルケースにして、時代遅れのFA補強を前提としたドラフト戦略を行ってきた事が、現在の状況を招いていると言われても仕方がない。
坂本以外のレギュラーを総入れ換えするような大変革がとれないのなら、現実的な策を講じてチームをソフトランディングさせながら変革し「あわよくば優勝」という形をとっていく他ない。
そういう意味では村田をチーム構想から外した事は、彼には申し訳ないが私がGMでも同じことを考えると思う。
ソフトランディングさせながら上位を狙い、再び黄金時代を築く為には、FA補強や外国人はあくまでも弱点補強という枠から逸脱せず、既存の戦力を的確に分析し、長期的なビジョンでドラフト戦略を貫徹する事である。
これは至極当然な事ではあるが、残念ながら近年のGに欠けていたと言われても仕方がないだろう。
具体的に言えば、ここ数年ドラフトで野手の主軸候補として獲得した選手は、捕手の小林とスラッガー候補の岡本だけで、他は言い方は悪いが「便利屋」の意味合いが大きい選手が圧倒的に多かった。
去年のドラフト7位で村上という選手を獲得したが、技術的にはまだまだ未熟ながらも「大きく化ける可能性のある素材型選手」を獲得した。
ハッキリ言って、この指名は賛否分かれる「博打」の要素が大きい指名だが、個人的には評価している。
こういう選手が本当に化けたときこそ、Gの歴史に名を刻むような選手になるからである。
勿論、清宮や安田や村上(ヤクルト)のようにドラフト1位で消えていく選手は、ドラフト戦略以前に「運」という要素が強くなり、思い通りにはならないケースが多々あるので仕方がない(個人的には安田を一本釣りしてほしかった)
もう一つ具体例をあげるなら、ドラフトで獲得した左打者が少ない事。
ようやく一昨年のドラフト1位で吉川を獲得し、今年は左打者を数名獲得したが、現状のチーム編成を考えると遅きに失した感が強い。
その結果が編成部の失策と言われても仕方がないくらい右打者偏重打線になってしまった。
後手にまわっているとはいえ、前段で述べたような方法で、チームをソフトランディングさせながら、ドラフト戦略を単純に即戦力という理由だけで投手偏重で指名せず、長期的なビジョンで考えチームの骨格を再構築していく事が、チームが再浮上するための「一見遠く見えそうだが最も早く最良の近道」と筆者は考えている。
やっぱり今回も前回予告していた本筋とは、かなり外れた文章になってしまったが、次回こそは本題に戻して期待の若手や打線の鍵を握る選手を語っていきたい。
以上 敬称略