先週、阪神に対して3連勝した巨人だったが、次の広島に1勝2敗という結果に終わり、再び崖っぷちに立たされた。
その広島戦では再び貧打状態に陥り、監督・コーチ・選手の動揺ぶりも目立っていた。
今回はその原因を筆者なりに考えていきたい。
【冷静さを失っていた原采配】
その象徴的な事例として挙げられるのは、田口に命じたスリーバントスクイズである。
テレビ解説の仁志氏は「この回は得点出来ればラッキーと割りきっている采配」と擁護していたが、個人的には「どう考えても理解出来ない采配」だった。
監督が命じた理由・根拠を筆者なりに考えてみた。
①まだゲームが始まったばかりの2回で、思い切った作戦を取りやすい。
②成功すれば、重くなりつつあるチームの空気を一気に変えられる。
③カウントが追い込まれた状況で、3塁走者が外国人で足の遅いアンダーソン、打者が投手の田口という相手が無警戒になる場面なので、田口が前に転がせば成功すると考えた。
仮に上記の事が監督の頭の中にあって、この作戦を実行させたのであれば、冷静さを失っているとしか思えない。
筆者がこの采配に否定的な理由は以下の通り。
①過去の数試合で送りバントを尽く失敗している田口に、過度のプレッシャーを与えてしまうこと。
②田口が失敗する可能性が高い事は、直前のセーフティースクイズで空振りしている姿を見れば十分予見できた。
よって成功する確率は極端に低いし、ダブルプレーになる可能性も高いと言わざるを得ない。
③仮にバットに当たって前に転がっても、アンダーソンの走力ではアウトになる可能性の方が高い。
特に①について更に言及するなら、その後のピッチングに悪影響を与えてしまう可能性が高いので、その点からもリスクが高い作戦と言える。
【積極的な姿勢が裏目に出た亀井の3塁牽制死】
ベンチの悲壮感が選手に伝わってしまっている事を象徴している場面だった。
普段は「抜群の判断力」と「アグレッシブな姿勢」で次の塁を貪欲に狙う亀井だが、この場面では「焦り」が先行してしまった。
ベンチからの指示なのかは解らないが、2塁走者のアンダーソンが飛び出し気味でベースから離れて、それを見た亀井は黒田が2塁へ投げると思い込んで、やや前のめりでホーム方向にスタートしようとしてしまった。
それをCバッテリーが冷静に判断し、2塁には投げずに3塁に投げて亀井をアウトにした。
果たして亀井の頭の中には、Cバッテリーが「百戦錬磨の黒田と石原」という事がインプットされていたのだろうか?
仮にインプットされていたなら、お粗末としか言いようがない。
逆にインプットされていなかったら、亀井の心理状態に異変があった事になる。
これはチーム全体に焦りが生まれている証しでもある。
【明らかに消極的になっていた坂本勇人】
9回裏・1アウト満塁の絶好の場面で登場した坂本だったが、この打席では「自分で決める!」という意志が全く感じられなかった。
その象徴的だったのが、カウントが3ボール1ストライクの状況で、あっさりストライクを見逃した姿だった。
この場面で坂本は「最初からタイミングを合わせようとせず」に見送ってしまった。
解説の仁志氏が語っていたように、坂本の考えのなかでは「追い込まれても粘れば押し出しになる」という意識が高かったかもしれないが、筆者の目には「消極的な姿勢」にしか映らなかった。
やはり、ここではしっかり狙い球を絞って打ちに行って欲しかった。。
言い方は適切ではないかもしれないが「責任を回避している」ようにも感じられた事が残念でならない。
「自分で決める」という意志が全く見えなかったので、制球を乱していたC中崎に腕を振って真ん中に投げ込む勇気をあたえてしまった。
これで完全に立ち直った中崎は、続く阿部に対して初球から「生きたボール」を投げ込んでいた。
これを見た筆者は敗戦を覚悟した。。。
【総評】
原監督が、打者が投手のケースで命じるスクイズや、スリーバントスクイズを命じるケースは、決して珍しいものではない。
むしろ他球団の監督と比べても積極的に用いる作戦と言える。
又、監督の特徴として、チーム状況が悪いときは「選手を動かして打破する姿勢」を貫いてきた。
だが、これまでと違うのは、明らかに焦りの色が色濃く出てしまっている事。
それが相手の選手やベンチにも伝わり、成功する確率が極端に減っている印象は否めない。
そして、この嫌な流れは自軍のコーチや選手にも伝わり「焦り」と「間違った積極性」を生んでしまい、最後には逆に「消極的な姿勢」となって現れてしまっている。
筆者は原采配の「攻めの姿勢」を高く評価しているが、それは決して「監督のヒラメキ」という事ではなく、冷静な目と判断によるものだと思っていた。
よって過去の失敗には「仕方がない」と割りきる事が出来たが、今回はかなり違う印象を持っている。
思えば、この3連戦で見せていた監督の表情は、回を追う毎に紅潮して険しい表情になっていた。
それだけ見れば、いつもと変わらない表情ではあるが、そんな状況でも時折見せる「冷静に選手を見る眼差し」が皆無だった事が気になっていた。
これはあくまでも筆者の思い込みかもしれないので、以下の言葉は「的はずれ」な忠告かもしれない。
「指揮官が冷静さを失えば部隊は全滅する」
以上 敬称略