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【試合総評】「流れを変えた坂本勇人の四球」と「ピンチを救った小林誠司の猛肩」【セ公式戦 CvsG 15回戦 7月24日】

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この試合は両エースの意地のぶつかり合いだった。
両投手ともに序盤にピンチを迎えたが、得点は決して許さない。 
気迫を感じた見事な投球だった。

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巨 人0000000022
広 島0000000011


★白熱の投手戦を一変させた坂本勇人の四球

G菅野は決して状態は良くなかった。
特に3回までは、直球・スライダーともに抜けてしまうケースが目立ち、フォークに落差もなかった。 
C打線のチグハグな攻撃とバントミスが無ければ、序盤で2~3点取られてもおかしくない状況だった。
しかし、4回から立ち直りの兆しを見せ始め、直球が徐々に低めに集まり、5回からスライダーも良くなりC打線を封じていった。

対してC前田は、序盤は菅野と同様にピンチを迎えていたが、彼の場合はボールの質は良かった。
菅野に感じた不安は前田には無かったし、公平な目で見れば菅野よりも前田の方が攻略は難しかったと思う。 
特にスライダーのキレと制球が抜群で、G各打者は坂本を除き全く対応できていなかった。 

8回に入ると、菅野の方は球数が多くなり徐々にスライダーが抜けるケースが出てきたが、前田の方は付け入る隙を全く見せていなかった。
明らかに流れ的には菅野が先に捕まり、前田が完封しそうな雰囲気だったが、先に点を与えたのは以外にも前田の方だった。 

9回のG攻撃は、各打者が自分の役割を着実に実行した見事なモノだった。

まず、坂本が四球で出塁した場面は、相手の徹底したスライダー攻めを凌いで、途中に前田渾身の150キロオーバーの直球もフルスイングで空振りし、これでCバッテリーはフルカウントから「見え見え」のスライダーを、コーナーに狙わざるを得ない状況を作った。
つまり、「見え見え」のスライダーなので、一発を恐れて真ん中付近に投げる事が出来なかった訳である。
結果、最後のスライダーも坂本が見切って、両者気持ちの入ったライバル対決は坂本に軍配が上がった。

そして、この坂本との「目一杯」の対決で、前田の投球リズムは明らかに変わってしまった
それまでコーナーにビシビシ投げ込んでいた事が嘘のように、その後の打者に対しては、初球から真ん中付近にスライダーを集めてしまっていた。
筆者には、彼の集中力が明らかに落ちているように感じた。

そこをG亀井・高橋由・阿部は見逃さなかった。
亀井は1ストライクからの甘いチェンジアップをライト前に運んで1・3塁とチャンスを拡げ、高橋由は初球の直球をレフト前に運び1点奪う。
続く阿部も初球の甘いチェンジアップを叩いてライト前ヒットで満塁にする。
そして代打・堂上も、犠牲フライをキッチリ打ち上げて追加点を奪った。
投げ急いでいた前田の僅な隙を見事に突いて先取点を奪い、最後は堂上が抜群の集中力で追加点をもぎ取った訳である。

★ピンチの芽を摘んだ小林の猛肩
 
2点リードして9回裏に挑んだ菅野だったが、球数が120球を越えて肉体的には限界を迎えていた。
先頭の梵はスライダー攻めで三振を奪ったが、続く會澤には真ん中高めの直球をライトスタンドに運ばれた。
あの高さのボールをHRにされるという事は、ボールの威力が衰えている証拠と言える。

次に左の松山が代打で登場したが、山口投入を考えていたのなら、ここで出すのがベストの選択だった。
しかし、続投した結果、松山にはライト前のポテンヒットで出塁を許し、代走にCの切り札・赤松が登場した。
この場面でマウンドに立つ事になったG山口は、走りにくい投手では決してない。
どちらかと言えば、どんな場面でも「足を上げて投球の間を大事にするタイプ」なので、隙が有ればかなりの確率で盗塁は成功できる。

しかも、迎える打者が好調・田中という事もあって、打者メインで神経を集中せざるを得ない状況だった、
そして2ボールとなって迎えた3球目に赤松は盗塁を試みた。
しかし、キャッチャーは相川でもなく加藤でも實松でもなく、G屈指の、いや球界屈指の強肩を誇る小林だった。
タイミング的にはセーフだったが、小林の送球はパーフェクトだった。
捕球体勢に入ったショート・坂本に無駄な動きをさせない最高の送球だった。

この盗塁阻止で勝負アリ、最後は山口が田中を抑えて1点差でGが勝利した。 

前の試合で首脳陣やマスコミから厳しい批判を受けた小林だったが、この試合は小林なしでは語れないだろう。
菅野と息の合ったリードを見せていたし、何より最後の送球は小林以外では実現出来ないプレーだった。
この緊迫した試合で最後までマスクを被り、彼は大きな自信を掴んだと思う。
ここから小林の野球人生が再スタートするだろう。
そして、チームにとっても近未来に向けて大きな1勝となった。

以上 敬称略